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アイドルオタク難民の難民キャンプと化したアニメとゲーム業界

雑記

「萌え」という文化がある。最初アニメや漫画で始まり、次いでゲーム業界にも影響を及ぼしているこの文化は、元々のその分野のオタク達からはあまり評判がよろしくない。何でもかんでも萌えにして軽薄なアニメやゲームが多くなったと嘆いているのです。この「萌え」とは一体なんであろうか。萌えの発祥はアニメの様に思われているが実際は違う、萌えの発祥はアイドル業界なのです。

80年代はアイドル文化が隆盛を極めた時代でした。松田聖子酒井法子といったアイドルが現れカリスマ的な人気を博し、そしてそれらアイドル文化を支えた多くのファン達が存在していたのです。
しかし時代は変わり現代ではブリブリのアイドルは消滅してしまいました。しかしアイドルは消滅してもアイドルに熱狂していたアイドルオタク達も消滅したわけではありません。そんな彼らはどこへ行ったのか?そう彼らはアイドル難民となり2次元の世界に逃げ込んだのです。

萌えアニメに登場する女の子達は、見れば見るほどかつてのアイドル達とそっくりです。清純でおしとやかで”トイレに行かない”女の子ばかり。勿論処女でなければならないし、たまにパンチラも見せてくれます。この女性像というのはそのままかつてのアイドル、つまりアイドルオタクの好みなのです。

当時のアイドルオタクの特徴とは以下の様なものです。

  • 好きなアイドルの関連グッズを湯水の如くお金を使い買い集める。
  • ライブには必ず行き、そこで持参したカメラでアイドルの姿やそのパンチラを撮る。
  • アイドルには絶対的な清純を求め、彼氏がいる事は許さないし処女でなければならない。
  • 自分が応援するアイドルをまるで父親の様な目で見守り、自分がこの子を育てている様な感覚に浸る。

まさに萌えを愛するアニメオタク達の特徴そのままです。

アイドルという存在がその残り香さえ完全に消え去った90年代後半、彼らは自分達の理想のアイドルを求め彷徨い、そしてついにアニメを見付けました。「萌え」という単語が印象的に使用される様になったのは記憶では1995年移行、概念そのものはもう少し前からあったのでしょう。もはや現実では手に入らない清純派アイドルも、虚構の世界ならいくらでも手に入ります。なにせ作り手が自由に設定出来るのですから。彼らはそこで現実で手に入らなくなったアイドルを求めました。従来のアニメファンにとって不運だったのは、そのアイドル難民の数がそこそこ多く、非常にお金を落とす人々だったということです。

アニメ制作者達はアニメを作りたいという動機と共に、お金を稼ぐために仕事をしています。最もお金を落とす層を探した時、新しい層がいる事に気付いたでしょう。そして彼らが求める物を作り始めました。こうして「萌え」と呼ばれる新たな文化が誕生しました。萌えとは即ち
「アイドル業界からなだれ込んできたアイドルオタク達の趣味趣向」
の事なのです。

アイドルオタク達は元々のアニメオタクとは似て非なる者です。彼らはそもそもアニメ好きではなく単なるアイドル好き、アニメに深いストーリー性や卓越した作画技術など求めません。求めるのは自分達を慰めてくれる理想化された架空の女の子だけ。
圧倒的な消費量を背景に、アニメは急速にアイドルオタク好みの作品が量産され、結果従来のアニメオタクが面白いと思えるアニメを駆逐していきました。

アニメをすっかり自分色に染めた新アニメオタク(旧アイドルオタク)達は、アニメだけでは満足出来なかった様です。元々アイドルというのは生身の人間ですし、アニメのたかが絵如きでは満腹にならなかったのでしょう。アニメ業界ですっかり幅をきかせたアイドルオタク達はもっと自分達を満足させてくれる世界を探しました、そしてそれがゲームだったわけです。

アニメによってある程度アイドルオタクは満たされました。現代では叶わない清純という要素だけで出来た偶像の鑑賞。しかし彼らはもっとインタラクティブを求めたのだと思います。つまりアイドルに自分が関わるという要素です。
アニメはただ鑑賞するのみですが、ゲームなら実際に合ったり触ったりは出来ませんが、会話したり育てたり、擬似的ではありますがデートすら出来るのです。先にゲーム業界にアイドルオタクが接近したのか、それともゲーム業界が新アニメファン層(アイドルオタク)に接近したのかは分かりませんが、ついにアイドル難民達はゲーム業界にも流入していく事になります。こうして今度はゲームの世界に新ゲームオタク(旧アイドルオタク)という層が発生したのです。

アイドルオタクはアイドル好きであってゲーム好きではありません。ゲーム業界に入ったとしても求める物はゲームらしいゲームではなく、アイドルっぽいゲームです。従来のゲームオタク達にとって不幸だったのは、彼らアイドル難民の数がそこそこ多く、非常にお金を落とす人々だったということです。
霞を主食にしていないゲーム開発者達は、いち早くやたらとお金を落としてくれるこの新たな層に気付いたのでしょう。アニメに続き一気にゲーム業界も萌え化されていきました。初めはせいぜいキャラクターデザインが萌え絵になった程度でしたが、現在ではゲームデザインのレベルで萌え化しています。典型的なのは「アイドル@マスター」でしょう。

アイドルマスターとは、プレイヤーがアイドルをプロデュースするプロデューサーとなり、日本一のアイドルへ選んだ子を育てていくというゲームです。これはまさに自分が育てたい、育てているという感覚を持つアイドルオタクにストライクなゲームシステムだと言えるでしょう。

このまま萌え化が進んで行くと何が起こるのでしょうか。恐らくは本来のアニメ、ゲームファン層が業界から離れていき、ユーザーにおけるアイドルオタクの占める割合が上がります。アイドルオタクは沢山お金を落とすので人数が多そうに感じますが、結局はニッチな層です。非常に少数の人々で業界を支える状態になると、もしその人達がいなくなった場合一気に崩壊してしまうかも知れません。

アイドルオタクは元々アニメ、ゲームオタクではないので、他にもっとよいコンテンツを見付ければあっさり見切りを付けて移動していくでしょう。100人のユーザーから1づつ消費される状態と、10人のユーザーから10づつ消費される状態では後者の方がリスクが高い。10人いなくなれば全て駄目になる後者と違い、前者ならまだ90%が残る事になります。ひょっとすると現在のアニメ、ゲーム業界は、アイドルオタクを案内人にして破滅の道を歩んでいるのかも知れません。

私は萌え化されたアニメやゲームが悪い物とは思っていません。しかし従来のファン層からすると軽薄で面白味の無い下らない物、という評価があるのも事実でしょう。旧来のファン層が言う所のアニメらしいアニメ、ゲームらしいゲームを取り戻すにはどうすればいいでしょうか。一つはアイドル文化がもう一度勃興する事ですが、アイドル文化が廃れてからモーニング娘。AKB48などが出ました、しかしかつての勢いとはほど遠く今後も期待薄と言わざるを得ません。もう一つは旧アニメ、ゲームオタク層が新アニメ、ゲームオタク層に買い負けない事です。開発者は儲かる方に舵を切るのですから、萌えでない方が儲かるのならそちらにシフトするでしょう。暗いと不平を言うよりも、進んでアニメ(ゲーム)を買いましょう、と言う事なのでしょうか。